アンサンブル学習による産科危機的出血の予測の研究を日本メディカルAI学会で発表
2021年7月26日サイオス
東京女子医科大学東医療センターの橋本和法教授、赤澤宗俊助教らとサイオステクノロジー株式会社の野田勝彦、吉田要らの研究グループは、第3回日本メディカルAI学会学術集会で「アンサンブル学習による産科危機的出血の予測の研究」の研究成果を発表しました。
産科危機的出血とは、分娩時における命に関わる大量出血で、いまだ周産期母体死亡の第一の原因です。近年、血管内治療や手術療法が進歩してきましたが、これらの治療を迅速に行える施設は三次病院(24時間体制で高度な救急医療を提供する医療機関)に限られており、予測外の産科危機的出血の管理は難しいのが現状です。分娩前に産科出血を正確に予測できれば、大出血が予想される妊婦を出産前から三次病院で管理することができ、産科出血による母体死亡を防ぐことができると考えられます。
同研究グループは、1995年から2020年までに東京女子医科大学東医療センターで経腟分娩となった9,894症例を対象に、機械学習による予測モデルを構築しました。産科危機的出血の定義は、経膣分娩時の出血量が500ml以上の症例とし、特徴量としては11個の臨床データ(年齢、分娩回数、母体の身長、体重、分娩週数、分娩前体重児の出生体重、児の性別、骨盤位分娩の有無、急速遂娩の有無、誘発の有無)を使用しました。学習と評価に用いたモデルは、ロジスティック回帰、ランダムフォレスト、決定木、勾配ブースティング木の4つのアルゴリズムのアンサンブルと2層からなるニューラルネットワークで構成しました。このモデルによる予測精度はAUC0.706でした。重要な特微量は、児の出生体重、年齢、分娩前体重であることが認識されました。
この研究により、分娩前に産科危機的出血が予測できる可能性が示され、今後、より大規模なデータを用いることにより、精度の向上が期待されます。
第3回日本メディカルAI学会学術集会 特設ページ:https://jmai2021.org/