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あらためてエンタープライズで「可用性」が重要なのはなぜ?

さまざまなリスクを適切にマネジメントする事業継続(Business Continuity)。ITサービス/システムのトラブルも大きな影響を及ぼしかねません。そのためにサイオスではさまざまな施策を提案しています。BC事業企画部長の御舩洋に聞きました。

テクノロジー2015年5月11日

アプリケーションレベルで処理を引き継ぐシステム

― 事業継続において、ITが担う役割や重要性が増しているそうですね。
事業継続(Business Continuity)は、さまざまなリスクをマネジメントし、顧客への製品供給やサービス提供を途切れないようにする企業の取り組みです。その中でITサービスやシステムを開発・運用する際に重要となるのが、可用性(Availability)の向上です。システムは予期しない故障、人的ミス、災害などで停止する可能性に常にさらされています。利用者側が必要とするタイミングで、待たせることなくシステム側が機能やサービスを提供できるか、言い換えると、想定しない停止時間をいかに短くするかということに尽きます。

どんなに機能面やデザイン面の要求を満たしたシステムであっても、運用が始まり、必要なときにきちんと動かなければ本領を発揮できないですよね。業務が止まれば利用するお客様にも迷惑がかかってしまいます。

高い可用性(High Availability、以下HA)は、システムのメンテナンスのしやすさや、セキュリティなどの条件と並んで、事業継続と切り離せない大切な要素なのです。

Hiroshi Mifune
BC事業企画部長の御舩洋

― HAシステムを実現するには、具体的にどういう方法があるのですか。
システムを二重化するなど単一障害点をなくす冗長化が基本になります。冗長化の技術にもいくつかありますが、そのひとつがフェイルオーバーです。稼動系(アクティブ系/プライマリー系)と、稼動系と同じOSやアプリケーション構成を持つ待機系(スタンバイ系)を用意します。万が一、稼動系が予期せず停止しても、いつでも動作を引き継げる(フェールオーバーする)ように待機系のシステムは立ち上がっている状態をキープしています。これをクラスター構成といいます。

システムの再起動では復旧までに数分を要するケースがありますが、このような高可用性構成を組んでいる場合は、短いダウンタイムでフェイルオーバーを完了することが可能です。遠隔地にある拠点間でWAN越しのクラスター構成にすれば、自然災害などが生じても処理を素早く安全に引き継ぐことができます。

具体的にそれを実現するのが「LifeKeeper」、サイオスが提供するHAクラスターソフトウェアです。「LifeKeeper」を使えば、HA構成をクラウド上でも簡単に構築できてしまいます。

― システムを切り替えたときに処理を引き継がせるには、データも同期させていないといけませんよね。
そうです。そこで、共有ストレージにデータをたくわえ、稼動系、待機系のノードいずれからも接続できるようにする構成方法があります。ただ、共有ストレージが単一障害点になりやすい、クラウド上では標準で利用できないので心配だ、という声もあります。

そこで注目されるのが、リアルタイムにデータをレプリケーションする手法です。一例を挙げると、SQL Server が稼働する仮想マシンに対して、あたかも共有ストレージが存在しているように見える仮想的なディスク領域を提供する方法があります。このソリューションのベースとなっているのが、データレプリケーションソフト「DataKeeper」です。「DataKeeper」を組み合わせれば、クラウド上でもSANなどの共有ストレージが不要な「SIOS SANLess Clusters」を構成することができます。ミラーリングするローカルディスクをWSFC(Windows Server Failover Cluster)の共有記憶域に登録して利用できるのです。

「クラウドだから少々落ちても」が許されない

― 「高可用性」は長年、大事だったわけですが、あらためてなぜ今、重要視されているのでしょうか。
クラウドやOSSの普及が背景にあります。とりわけ昨今、「クラウドファースト」といわれるように、システム構築ではもう自前でシステム基盤を開発せず、プライベートクラウドやパブリッククラウドの利用が選択肢の一つとして当たり前になってきました。これは通信、金融、流通、製造など業種業態を問いません。また、官公庁ではベンダーロックを外すために、Linuxを含むOSSでの利用が増えていることがあり、HAの強化が求められています。

そうなると安かろう悪かろう、クラウドだから多少落ちてもしかたない、というわけにはいかなくなります。サーバーが止まるとビジネスが止まるような場合、オンプレミス並みの可用性が求められます。ECや販売促進など売上に直結するシステム、インシデント検証に必要なログデータを集めるシステムなど、基本的に24時間365日運用し続けるシステムがクラウド上で多数動いているのが今日の状況です。

それに対して前述の「LifeKeeper」は、Amazon EC2、Fujitsu Cloud IaaS Trusted Public S5、ニフティ クラウドなど、主要なパブリッククラウド事業者の提供するサービス認証を受けています。また、Amazon EC2ではリージョン間でのHAクラスター構成(Cross Region構成)をサポートしています。

私がサイオスに入社した十数年前ですが、もともとUNIXの世界ではHAが当たり前でした。やがてIAサーバーの性能向上を背景にUNIXがOSSもしくは商用版のLinuxに置き変わっていきました。Linuxに重要なシステムを載せるとなると、アプリケーションレベルでのHAが必要になります。おおまかにいって、世の中で稼動しているLinuxシステムのうち20%程度はHA構成だという指摘もあります。ちなみに、Windows系だと今日では10%ほどがHAシステムといわれています。

システムの重要性を再確認して

― つまり、重要なシステムがクラウドで稼働する流れが浸透していくと、HAシステムもさらに増えると。
ええ、そうなんですが......。実はまだ、HAの大切さが広く認識されているとはいえません。「コストが高いからHAを外そう」というケースも多いのです。

― いわば、可用性のような「非機能要求」は、費用に比べて選定の際の優先順位が下げられるケースもあるということですね。
「日頃の運用でカバーすればよい」「何かあったら、現場の担当者が汗をかけばいいんじゃないか」という考えもまだ根強いのです。ハードウェアやOSレベルの可用性向上はサーバーの提供するHA機能で担保するけど、アプリケーション側についてはそういった声もあります。

もちろん、すべてのシステムを「一秒も瞬断させない無停止システム」にする必要はありません。とはいえ、金融機関では決済システムに規定値を超えるサービスの遅延や停止が起こった際、監督官庁への報告義務が課せられているものもあります。「自社のサービスの重要性がどれくらいか」をいちどチェックしてみていただきたいと思います。

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「安心感」をお届けしたい

― HA構成にするには、物理サーバーの種類をはじめ、さまざまな仮想化技術、クラウドサービスとの組み合わせが考えられます。それに対応するのはかなり大変では。
それを可能にしている要素が大きく2つあります。一つは、メーカーやパートナー企業とのパートナーシップです。もう一つが、エンジニアの力です。

まず、パートナーシップのほうでは、メーカー各社様のお力もあって実機検証などをさせてもらい、動作保証についてお墨付きを頂いています。また、ARK(Application Recovery Kit)という対応するオプションを用意させて頂くことで導入はより簡単になっています。システムインテグレーター企業様が、マルチベンダー環境でシステムを構築されている企業などのお客様に対してサイオスの製品をサードパーティ製品として組み合わせて提案するケースも増えています。「サイオスの製品なら、認証があるので組み合わせても安心だな」といってもらえると私たちも嬉しいです。

そしてもう一つ、新たな技術に対応、挑戦するプロダクトを開発するには、エンジニア、技術者の力が必要です。
サイオスには突出した技術力を有するエンジニアがいます。そういうエンジニアは研究熱心で、新旧の技術をとことん突き詰め、さまざまな知見を蓄えています。私たちは、そういうエンジニアの能力をお客様の課題解決にいかに役立てるか、と常々考えています。

たとえば、クラウドイネーブルドに関してはお客様からのクラウド利用に対するニーズ上昇とともに、SIOS iQ™など、ITオペレーションの自動化に向けて世界に先駆けた成果を発表することができました。
また、先ごろ発表した富士通エフサスとの協業のように、異なるクラウド事業者のサービス間を越えたフェイルオーバーなど、より安心できるクラスター構成によりさまざまなリスクをヘッジする技術も確立しています。「LifeKeeper」の認定クラウド環境では、利用料金もサブスクリプションライセンスに対応させることで、お客様は初期コストを抑えつつ、可用性の向上、運用管理の効率化といったクラウドの最新技術を利用することができます。

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エンジニアの卓越した知見はこのようにサービスやプロダクトの研究開発においても不可欠です。信念をもって未踏の領域を切り開いていける人。そういう人がサイオスを作ってきたという側面があります。その力を生かしつつ、パートナー様とフェイス・トゥ・フェイスでソリューションやビジネスを作り、新たな市場を開拓していきたいですね。

もちろん、目線はあくまでシステムの発注者であるユーザー様です。将来、HAシステムが入っていることが分からないくらい、事業継続における可用性の向上が当たり前になってほしいですね。

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SANless Clusters